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終わる企画と終わらない企画という話

全体公開

2021年10月24日 19:00

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ネットではたまに「○○してくれる方を募集します!」という一文を見ることがありますよね。

例えば、作っているゲームのCVの募集だったり、何らかの企画のお手伝いやスタッフの募集についてです。

ところが、こういった企画の多くは完成することなく、途中で制作を中止してしまうなど頓挫してしまうことが非常に多いです。

ひょっとしたら、これを読んでいる方も「自分が参加した企画が途中で取りやめになってしまった」という経験があるかもしれません。

 

何故そんなことが起こるのか。

きちんと「終わらせる、完成させることが出来る企画」と「終わらない、完成しない企画」の違いはどこにあるのでしょうか。

 

その原因については色々ありますが、多くは企画完成までの「計画」がきちんと立っていないことが原因でしょう。

「計画」とは何なのか。それは「企画を終わらせるまでの予定」です。

この予定が立っていない企画は、進めることはできても終わらせることはできません。いつまでたっても完成することはないでしょう。

 

今回はそういった企画を推進するうえで必要になるもの、企画者向けの話をしましょう。

例として、ボイスドラマ動画を制作する場合で考えてみます。

 

ボイスドラマ動画を作るのに必要なのは、まず

①台本

②キャスト

③編集

ざっくりこの3要素で、用意する順番もおおむねこの通りでしょう。

「編集するには音声の収録が必要、なのでキャストさんに音声を提出してもらう、そのためには台本が必要。なので、台本を用意して、キャストさんに渡して収録してもらって、提出された音声を編集する」

大体の人はここまでなら当たり前に思いつきます。

ところが、ここで止まってしまっている場合が意外にも多いのです。

 

「台本が出来たらキャストさんに渡す、キャストさんから音声をもらったら編集担当に渡す、編集が終わったら完成」

これは一見問題ないように見えますが、上記のこの状態では「計画」とは言いません。

これはあくまで必要な「段取り」であって、完成までにやらなければいけないことを大まかに並べただけにすぎません。

 

「計画」とは、「何に対してどれだけのコストと時間を割くか」と「当初の想定が誤っていた場合、どのように修正するか」を含めて「計画」になります。

つまり、各工程で「誰が(何人が)」「いつまでに(どれだけの時間をかけて)」作るか、また、それが上手くいかなかった場合どう修正するかをそれぞれ考えなければなりません。

 

計画の基本的な立て方としては、まず「いつ作品を発表したいか」というゴールの日付を決め、そこから逆算して各工程をいつまでに終わらせればいいかを考えます。

しかし、多くの企画はこの段階で躓いており、それゆえうまく進まないことがほとんどです。

 

例えば、「先の予定が見えないので編集に実際どのくらいの日数がかかるのかわからない。だから発表したい日付から逆算しようにも、編集をいつから始めればいいのかわからない」というように、各工程でどのくらいの時間がかかるか見通せないという方が多いです。

実際、完成までが大変な企画になるほど、ずっと先の日付までかかることになるので、その頃の自分の予定なんて見えないことの方が多いです。

そうなると「予定が立てられない。なので正確な日付は決めず、とりあえず終わり次第次の工程に進める」といった(厳密には計画とは言えない)計画を立ててしまう場合が多くなります。

 

「先の予定なんて見えないんだから、仕方ないよね」と考えてしまいがちですが、こうなってしまうと泥沼状態にはまる可能性があります。

予定が立てられないということは、「優先順位を決められない」ということでもあります。

なぜなら、日付を決めないということは、裏を返せば「いつでもいい」ということでもあるからです。

これは自分がそう意識していなくても、いつの間にかそうなってしまうものです。

 

「いつでもいい」と思っている物事の優先順位は、必然的に下がります。

編集がどれだけ長くかかったとしても、「元々どれだけ時間がかかるかわからないものだし、終わるまではどうしようもないから時間がかかってもいいか」と妥協する思考が働いてしまいます。

そして、そういう風に「いつでもいいか」と思っているものって、得てして後回しにされますよね。

こうやって「どれだけかかるかわからない」と思っていることが、どんどん「いつまでも終わらない、進まない」ことに変わっていくんですね。

 

では、どうすればいいのか。

日付を決めてしまえばいいのです、締め切りとなる日付を。

どれだけかかるかわからなかったとしても、とりあえずテキトーでもいいので日付を決めてしまうのです。

 

そりゃあもちろん、最初に各工程の締め切りを考える時点で的確な日付を考えられるのが理想ですが、不測の事態はいつでも起こりえます。

そうなれば、嫌でも計画は変更せざるを得ません。

逆に言えば、計画は最初に立てた計画のまま進める必要はないのです。必要とあれば、変更したっていいのです。

だから、分からなければとりあえず最初はテキトーな日付でもいいのです。

計画とはそういうものです。

 

例えば、それで最初に立てた「台本完成までの日付」があまりにも短かったら、「やっぱり締め切り伸ばさなきゃ」となりますが、「その時点でどこまで進められていたか」ということから大体の作業量は見積もることが出来ますよね。

「1ヶ月で完成させるつもりが、1ヶ月弱で5割程度しか進まなかった」となれば、締め切りをもう1ヶ月伸ばせばいいのです。

もっと理想を目指すなら「1ヶ月で完成させるつもりが、半月で3割弱程度しか進んでいない」と分かった時点で、締め切りを1ヶ月伸ばせばいいのです。

テキトーでもいいので予め日付を決めておけば、どの作業にどのくらいのコストがかかるのかが見えてきます。

 

「でも締め切りは伸ばせないよ、伸ばしたくないよ」という場合はどうすればいいか。

方法は色々あるでしょうが、単純なのは人を増やすことです。

「1人だと1ヶ月で半分までしか進まない」というのであれば、2人にすればいいのです。

 

「でもこれは複数人でできる作業じゃないよ、その人1人にしかできないから人増やせないよ」となったらどうするか。

後続の工程で巻き取ればいいのです。

台本制作に時間がかかってしまい、かつ作品発表の日付を伸ばしたくないのなら、他の工程を予定より短くできるよう対策をすればいいのです。

予め「今後は当初の予定より早めなくてはいけない」というのがわかっているのと「取り組んでみたら当初の予定より進みが遅いから、今何とかしなきゃいけない」というのでは対策の立てやすさが違いますよね。

 

と、このように正確だろうが正確じゃなかろうが、とりあえず日付を決めておくだけで、できることや考えられることがかなり増えます。

そして当然「いつまでにやらなきゃいけない」という意識も働くので優先順位についても考えることが出来ます。

「計画」というのは、このように日付や優先順位を決め、時には状況を見て変更をするなどして立てていくものなのです。

 

今回の話はあくまで一例に過ぎませんが、「企画を考えて進めてみるけど、いつもうまくいかない」という方は、とりあえず各工程に対して「コストと時間」という計画を細かく立ててみるとよいでしょう。

 

逆に企画に参加する側の方は、こういった計画がきちんと立っていない企画は、要注意かもしれません。

 

以上、総勢20~50人に及ぶ大規模声劇企画を過去8回ほど推進してきた企画者からの話でした。

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